獣医師に聞く! 気づいてあげたい関節トラブル《パート1》

犬や猫も人間同様、長寿化が進み、昔よりずっと長生きできるようになりました。7歳以上をシニア期とした場合、犬猫たちは寿命を全うするまで長いシニア期を過ごすことになります。シニア期に特にトラブルが増えるといわれる関節・骨の病気について、獣医師の堀木研子先生にお話をお伺いしました。 2018年10月30日作成

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TOPIC 01

シニア期に多い「関節炎」

関節や骨の病気には股関節形成不全など、様々なものがありますが、シニア期にどの犬も、猫も注意したいのが「関節炎」です。

堀木先生:
「そもそも関節とは、骨と骨の連結する部分を指します。骨は非常に硬いため、直接触れ合うと、すり減ってしまいます。そのため、骨の表面は軟骨で覆われており(=関節軟骨)、さらにスムーズに動くように潤滑油となる液体、滑液があります。これによって、動物は自在に体を動かせるようになるのです。

関節炎は、この関節軟骨の表面に炎症が起きている状態を言います。関節炎になると、当然のことながら、人間と同様に痛みを感じます。

犬や猫は我慢強い動物なので、痛いからといって、パッと見ただけでわかるほど行動が大きく変わることはないと思います。しかし、常に痛みを抱えているという状態はストレスにも繋がります。ストレスを感じて食欲が落ちてしまったり、さらには覇気がなくなったりと元気もなくなってきます。お散歩や外で遊ぶのが好きな子には、痛みを感じて自由に遊べないということはとてもツライことではないでしょうか?」

日本では成犬の2割以上、シニア犬になるとその多くが関節炎を患っていると言われています。愛犬が毎日を楽しく、健やかに過ごすためにも、関節のケアはとても大切なのです。

TOPIC 02

実はたくさんいる、関節炎の猫

関節炎というと、犬に多い病気だと思われがちですが、実は決して犬だけの病気ではなく、猫にも多い病気なのです。

堀木先生:
「犬は普段からお散歩に行ったり、外で遊ぶ機会が多いので、飼い主さんが手足を痛がっていることに気付きやすく、そのために発見されやすいだけで、猫にも関節炎は多いと言われています。

猫にも人間そして犬と同様の症状が出ます。しかし、猫はほかのペットに比べても特に痛がる姿を見せない動物ですし、飼い主さんも気付きにくいのでしょう。そのため、動物病院を受診する頭数も少なく、飼い主さんが知らない間に関節炎になっている場合も多いと考えられます」

しかし、近年、アメリカで発表された調査報告では、猫の関節炎の有病率が高いことが明らかになりました。この報告によると、91%の症例で、手足の関節に少なくとも1つ以上の関節炎が認められたと言います。「うちの猫は大丈夫」は禁物。シニア期には、すべての犬、猫が関節炎になる可能性があると考えましょう。

文献:Duncan X.Lascelles,et al, Veterinary Surgery 39,2010

TOPIC 03

関節炎が起きやすい部位

人間の場合は、手、背骨、股関節、膝、足に起こりやすいといわれる関節炎ですが、犬や猫の場合はどうなのでしょうか?

堀木先生:
「犬も猫も4本足で立っている動物なので、ヒザや手首、人間でいうヒジに当たる関節は炎症が起きやすいと言えます。

それ以外にも、犬の場合には背骨、猫の場合には、股関節の関節炎を起こしやすいというデータもあります。また、猫の場合には、ジャンプをする動作が多いことから、前足にかかる負担が大きいため、前足の関節を痛めることも多いようです」

▲国内の獣医大学附属動物病院での調査では、変形性関節症の発生率が最も高いのは手根関節30%、肘関節25%、膝関節22%という傾向があったとの報告もあります。
出典:Felis Vol.13 2018.5

TOPIC 04

関節炎を患いやすい犬種&猫種

では、犬猫、それぞれなりやすい種類はあるのでしょうか?

堀木先生:
「チワワなど体が小さな犬種は、足の骨が細く、筋力もあまり強くありません。そのため、肥満体型になってしまうと、骨に過剰な負荷がかかり、関節を痛めやすいと言えます。

また、小型犬の中には、膝蓋骨亜脱臼という、ヒザの皿が外れやすい病気を持っている子も多くいます。そういった持病がある場合には、過度な運動をすることで関節を痛めやすいので注意が必要です。

一方で、大型犬の場合、体が大きいことから関節に長年の負荷がかかり、加齢にともなって手足の関節炎を起こしやすくなります。ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなどの人気のある大型犬の中には、遺伝子的に股関節形成不全を患いやすい犬種も多く、その場合にはさらに関節に負荷がかかりやすいため、関節炎を患う可能性が高くなります。

猫の場合、スコティッシュフォールドやマンチカンは関節炎を起こしやすい種類といっていいでしょう。これらの猫たちは、骨が正常に発達していない種類のため、宿命的に関節の病気にかかりやすいと考えられます。これらの猫の場合、シニア期を迎えたら特に、動作に異変がないか日頃から意識してあげると良いでしょう。

また、犬、猫ともに足が短い種類の子は、骨の成長が一般的な犬猫とは違うために、関節炎になりやすいといえます。

ただし、これらはあくまでも目安です。この犬種だから絶対になる、この犬種はならないというものではありません。どんな犬種、猫の種類であっても、シニア期になれば関節炎に罹患する確率は高まります」

▲犬や猫のシニア期に多い「関節炎」についてお話してくださった堀木先生。

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