ペットのための漢方薬【前編】

皆さんは、「ペット用漢方」をご存知ですか? その名の通り、犬や猫のための漢方薬を指します。人間同様、西洋医学とは違った観点から病気にアプローチし、治療する方法です。今回は、漢方内科どうぶつ病院「ハルペッツクリニック東京」の院長・林晴敏先生に、ペットのための漢方についてお話をお伺いしました。 2018年06月14日作成

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1. そもそも漢方薬って何?

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漢方薬は、様々な作用を持った植物や動物、鉱物など生薬を複雑に組み合わせて作られた薬です。日本には5世紀ころに伝わったとされ、その後、日本の風土や体質に合わせて独自に発展してきました。

現在では、病気や症状に合わせ、西洋医学と並行して取り入れることで、より良い治療を行うことができると考えられています。

ペットのための漢方薬も人間と同じです。生薬を組み合わせ、それぞれのペットに合わせた漢方薬を服用することで、症状を改善・治療していきます。

2. どんな症状に効果があるの?

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では、漢方薬を使うことで症状の改善が見込まれるのはどういった場合なのでしょうか?

「急性疾患、つまり抗生剤を投与することで治る感染症などの病気、縫合など外科的処置が必要な怪我などは西洋医学で治すことができます。そのため、急性疾患の場合には、漢方薬は必要ありません。

漢方が向いているのは、西洋医学では治らない病気、つまり慢性疾患です。僕たち、漢方薬を扱っている医者から見ると、西洋医学で治らないから慢性化しているのであって、治せるならば慢性化しない病気でもあるのですが…。

ともあれ、慢性的な疾患は漢方薬の効果が期待できる病気といえます。例えば、成人病、糖尿病、肝臓病、腎臓病、免疫疾患などが挙げられます。これは、ペットのみならず、人間にも言えることです。西洋医学が苦手な部分は、漢方薬を使って補完するのです。

特に、免疫疾患は西洋医学で治療するのが難しい病気です。西洋医学では治療が難しいので、ステロイドを使って症状を抑えていきます。自然治癒力がある若い子はいいのですが、ある程度の年齢になっていて自然治癒力が見込めない子の場合、袋小路のように体が弱っていくだけです。そういった子にこそ、漢方薬は向いているのです」(林先生)

3. 漢方薬を処方してもらうまでの流れ

漢方薬は、獣医師によって適したものを処方してもらい、それを飲み続けることで効果を発揮します。そのため、まずは獣医師に診断をしてもらう必要があります。

林先生の病院では、初回の診療時に犬や猫を連れて行き、体質を見て、飼い主に問診をした上で、証(しょう)のあった漢方が処方されます。

漢方薬では、この「証のあった」ものであることがとても大事。証が合っていない薬を飲んだ場合、体にダメージが出てしまい、体調を崩してしまう場合もあります。一方で、証があったものであれば副作用はないといいます。その子に合った薬を適切に飲むためにも、必ず、医師の診断を受けた上で、漢方薬を服用しましょう。

4. 治療期間はどのくらい?

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治療期間は病状によってまちまちですが、林先生は「1ヶ月飲んで効果がわからない子は難しいと思います」と話します。

「1ヶ月である程度の効果を出すつもりで、僕は処方しています。少なくとも、好転反応(漢方が効いていることを示す症状、詳細は後述)は出せますし、好転反応がなくとも血液検査の結果が良くなった、見た目が変化したなど、飼い主さんがなんらかの変化を感じられる効果を出す自信はあります。

しかし、それを感じられないような軽い病気の場合には漢方を飲む必要はないと思います。また、一方で、病気が重すぎて、漢方薬では効かないという場合もあります。手術を繰り返していたり、強い薬を長期的に使っていたという場合には、漢方薬が効果を発揮しません。こういった場合にも、飲み続けても改善が見込めないといえます」(林先生)

漢方薬を試す場合には、まずは1ヶ月を目安に、治療を行ってみましょう。

5. 漢方薬のデメリットって?

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では、漢方薬にはデメリットはないのでしょうか?

「高価であるということはデメリットだと思います。ステロイドのような薬は、低価格で効き目があります。しかし、漢方薬はそういった薬よりは高価です。抗がん剤よりは安い、とはいっても、一般的に考えると、高いと感じる人が多いと思います」(林先生)

副作用に関しては、前述した通り、証(しょう)に合ったものを飲んでいれば、まずあり得ません。しかし、下痢をするというような「好転反応」は出現します。では、この「好転反応」とはなんなのでしょうか?

「好転反応とは、僕たち医者から見ると、漢方薬の量を決めるためのサインで、漢方薬が効いている証拠だともいえる反応です。

漢方薬は、体質によって量が決まるので、西洋の薬と違って体重で量を決められません。そのため、初診時に病気の経過などを問診で聞き、量を決めていきます。しかし、それだけでは、その子にベストな量を決定するのは難しいといえます。

そのため、好転反応が医者が漢方薬の量を決めるときのサインとなるのです。

例えば、幼児がチョコレートを食べ過ぎると、鼻血が出ることがありますよね。あれも好転反応です。カカオによって血の巡りがよくなり、その結果、鼻血が出る。それを見て、この子にはこの量は多いから、もう少し減らそうと考える。

それと同じように、好転反応が出ることで、漢方薬の量を決定できるので、僕らは限界がわかって安心します。西洋医学の先生から見ると、副作用と思われるかもしれませんが、僕たち、漢方を扱う医者にとっては、エキサイティングでポジティブなものなんです」(林先生)

患者が、治療をする上で、気をつけるべきことはどういった点でしょうか?

「急性疾患の場合には、まずは主治医のもとへ行ってください。急性疾患の場合には、西洋医学の方が効果を発揮する場合も多々あります。

しかし、それでも治らなかったり、『一生ステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤』と言われた場合には、ぜひ、門を叩いてください。すぐに治療を開始せず、一度、立ち止まって、セカンドオピニオンを聞いてもらいたい。もしかしたら、違う方向での治療があるかもしれない。これは、人間にも言えることですが、一度、冷静になって、治療について考えてみるのも大切です」(林先生)

ペットのための漢方薬【後編】に続く

漢方治療専門どうぶつ病院 ハルペッツクリニック東京

ハルペッツクリニック東京【漢方・東洋医学動物病院|犬猫の皮膚病・腫瘍などの漢方治療】

出典元:https://www.harupets-tokyo.com/

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著者情報

UCHINOCO編集部

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